神通の清流よ、永遠に 2023年10月5日

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ページ番号1013725  更新日 2023年10月5日

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富山空港の対岸の神通川左岸堤防を北へ向かうと、おおむね10メートル間隔に並び、腰まで水に浸かってアユ釣りに興じる太公望(たいこうぼう)たちの姿が見える。各地から訪れる釣り人たちの姿は、今や神通川の夏の風物詩でもある。全国でも有数のアユ釣りスポットであるその清流は、一年を通して豊かな水量を湛(たた)え急流となり、一気に富山湾へと流れ込む。神通川は、岐阜県高山市の川上岳(かおれだけ)を源に、流域面積2,720平方キロメートル、幹川流路延長120キロメートルを誇り、緑豊かな山岳地帯から流れ出すその清流は、豊富な栄養分やミネラルを含み神通川の幸や富山湾の幸を育むのである。

この辺りは、母の実家が近いことから子どもの頃は従兄弟(いとこ)や友達と一緒にしばしば川遊びにも来た思い出の場所でもある。当時は今のような整備された護岸ではなく、激しく流れる瀬と淀(よど)んだ淵は、冒険心を満たすという点において格好の遊び場だった。崩れかけた蛇篭護岸(じゃかごごがん)の淵に潜ると、アユやコイ、フナやマスなどの川魚が悠々と泳ぐ姿を見ることができた。波立つ早瀬の川底にはひょうきんな顔をしたカジカがはりついていた。釣り人には騒がしく邪魔な坊主たちのため、「魚が逃げるからあっちへ行け!」と叱られたこともあった。日焼けした少年たちの笑顔も叱られたことも、今となっては全てが良い思い出である。

さて、話は変わるが、神通川を語るときに目を背けてはならないのが、「イタイイタイ病(以下、イ病)」の歴史である。小学生の頃に叔母から「イタイイタイと苦しみ続ける病気」のことを初めて聞いた。イ病は、神岡鉱山から排出されたカドミウムが川水や流域の農地を汚染し、水や米などを通じて人体に蓄積されることで引き起こされた公害病である。世間の偏見にさらされた患者やその家族の辛く長い闘いは、原因企業との裁判において、1971年の富山地裁と1972年の名古屋高裁金沢支部での原告全面勝訴と、その後時を経て2013年に神通川流域カドミウム被害団体連絡協議会が三井金属と全面解決の合意で一応の決着を見たが、私たちは富山市民としてその公害の歴史を決して忘れてはならない。

今は県立の「イタイイタイ病資料館」においてイ病の歴史を学ぶことができる。ここでは「悲しく辛いイ病の歴史を風化させてはならない、公害を二度と起こさない、神通川の清流と素晴らしい自然環境を未来へ引き継いでゆく」という未来志向の取り組みが始まっている。自分にとって大切な人やご家族、町内会やPTAなどでぜひ一度訪れていただき、そんな思いを共有していただきたいと願うのである。私たちの子どもたちと地球の未来のために。

写真:神通川
神通川の清流

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