敬愛すべき二人の大統領 2024年11月5日

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ページ番号1016209  更新日 2024年11月5日

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自室の書棚には、クリアファイルに挟まったセピア色の古新聞が大切に保管してある。中学生の頃、タンスの引き出しの底に敷いてあったものを偶然見つけた。「ケネディ大統領就任演説」の大見出しと、自信に満ち溢れた若きリーダーの姿が目に飛び込んできた。普段は新聞などをあまり読まない少年だったが、古新聞を手に取り何度も読み返していた。言葉にできない高揚感を覚えたものだ。それからは、学校の図書室などで、ジョン・F・ケネディ大統領に関する本を片端から読み漁(あさ)った。1961年1月、ケネディ大統領は、寒風吹きすさぶワシントンDC連邦議会の石段で行った就任演説で、人類の共通の敵である弾圧政治・貧困・疾病、そして戦争そのものと闘い、そのために米国はいかなる代償も払い、いかなる重荷も背負うという強い決意を全世界に表明した。また、自国民に対して、「国があなたのために何をしてくれるかではなく、あなた自身が国のために何が出来(でき)るかを問うてほしい。」と、蔓延(まんえん)する利己主義を超えて、理想の世界を創るために共に闘ってほしいと訴えたのである。

もう一人は、「世界で一番貧しい大統領」と呼ばれた、南米ウルグアイのホセ・ムヒカ大統領である。貧しい家庭に生まれたムヒカ少年は、貧困や格差社会に矛盾を感じ、若い頃から反政府ゲリラ組織に参加した。後に組織の指導者として活動したが、軍事政権下での13年間の投獄生活など壮絶な人生を送る。民主化後は左派の政治家として活動し、1995年には下院議員に初当選し、2010年から5年間大統領を務めた。ムヒカ大統領は、2012年の国連持続可能な開発会議(リオ+20)で行った演説で、「無限の消費と発展を求める社会は、人々や地球を疲弊させる。発展は人類の幸福のためでなければならない。」「本当に貧しい人とは、少ししか物を持っていない人ではなく、いくらあってもまだ足りない、まだ欲しいと満足しない人だ。」と、自由経済の本来あるべき姿や環境問題の本質、幸せになるために人は如何(いか)に生きるべきかを説いた。

さて、世界情勢を観(み)ると、ロシアのウクライナ侵攻やパレスチナ紛争では、罪のない多くの市民や子どもたちが犠牲になり、地球上では今もなお多くの人々が貧困や飢餓に苦しんでいる。かつて、二人の大統領が夢見た理想の世界とは程遠いものになっている。世界では自国第一主義が横行し、自国においても「自助・共助・公助」や、「利他の心」など、日本人が大切にしてきた精神性や規範意識が薄れつつあるのではなかろうか。

愚者は経験に学び賢者は歴史に学ぶ。今こそ、国際化と激動の時代を生きる私たちが、歴史や哲学を重んじ崇高な理想を掲げて闘い続けた、二人の大統領から学ぶべきことは多いのだろう。

写真:図書館でケネディ大統領の本を閲覧する市長
図書館でケネディ大統領の本を閲覧する市長

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