心に残るシンボルツリー 2024年10月5日
台風の影響が心配された越中八尾「おわら風の盆」が、沢山の観光客をお迎えして無事開催できたことは嬉しい限りである。立春から数えて二百十日の風封じと五穀豊穣を願う、三百年余の歴史を刻む伝統行事の本領発揮ということだろうか。
さて、最盛期を迎えた稲刈り風景を横目に母校である神保小学校の前を通ると、その前庭では何時(いつ)もと変わらず堂々とそびえ立つ松の並木を見ることができる。この松たちは、自分が入学するずっと前から母校のシンボルツリーとしてたくさんの新入生を迎え、その成長を見守り、送り出してくれた。子どもの頃もずいぶん大きく見えたが、その印象は今も変わらない。校門のそばの一際(ひときわ)立派な松の木は、地面から3メートルの高さまではやや斜めに伸びており、小学生が木登りをするにはうってつけの形状で、先生に見つからないようにこっそりと登ったことを思い出す。当時の木造校舎は跡形もないが、今も変わらないこの木々を眺めていると、お世話になった恩師や同級生の笑顔、楽しかった思い出がつい昨日の出来事のように蘇(よみがえ)ってくるのである。
ところで、新築時やお子さんが生まれた記念に、玄関先や庭などにシンボルツリーを植樹するご家族が増えているようだ。かつては新築時に植樹するシンボルツリーは松や檜(ひのき)などが多かったようだが、最近はオリーブやシマトネリコ、きれいな花が楽しめるサルスベリやヤマボウシなども人気があるという。マンションにお住まいの方々にも室内やベランダで観賞される常緑樹や観葉植物などは大変人気がある。
自分が子どもの頃は実家をはじめご近所の農家の敷地で、柿や栗、梅やイチジク、ザクロや桑(くわ)などの「実のなる木」も多く見られたものである。柿や栗などは高所に実をつけるので、竹竿(たけざお)の先をV字に切れ目を入れた自作の道具で、たわわに実った果実の手前の枝を挟みながらもぎ取った。柿や栗の実を取るのは子どもたちの仕事であり、兄弟や近所の子どもたちと夢中になって収穫したことは良き思い出である。敷地の中に竹林がある家も珍しくなく、春には筍(たけのこ)や蕗(ふき)を採り、夏にはミョウガなども採れて、今思えば実に季節感に満ちていたものだ。
さて、少し脱線したのでシンボルツリーの話題に戻そう。見る人々に安らぎを与え、子どもたちの成長を見守り、家族とともに歴史と思い出を重ねて行く、シンボルツリーとはそんな存在であろう。そして、私たち一人一人に、通学・通勤の道すがら、あるいは職場や近所の公園などに、心に残るシンボルツリーがあるのだと思う。
とりわけ未来を生きて行く子どもたちにとっては、日常生活の中にある檜や桜、イチョウや身近にある木々たちが、ふるさとの情景として「心に残る大切なシンボルツリー」になって行くのだろう。

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