「日本人と竹」のお話 2024年12月5日
今年9月、「とやまの竹の祭典2024」が呉羽青少年自然の家を舞台に開催された。竹を材料にした「竹あかり灯篭(とうろう)」や、竹と里山で拾えるドングリなどを使用した「竹工作」、竹炭づくり、竹炭キャンプファイヤーなど、親子で参加して竹に親しみながら楽しめるコーナーも大盛況であった。私たちが身近に目にする代表的な竹と言えば、真竹(まだけ)、淡竹(はちく)、孟宗竹(もうそうちく)である。真竹と淡竹は古くから日本に自生していたと考えられているが、孟宗竹は1736年頃に中国から伝来したそうである。この祭典は、竹に親しむ機会を提供するだけではなく、近年問題になっている放置竹林の整備や竹の活用について考える良い機会となった。
さて、人の手によって整備された竹林は、実に美しく私たちの心を和ませてくれる。最近、呉羽丘陵では、放置され雑木や竹などが鬱蒼(うっそう)と生い茂っていた斜面が、徐々に整備され明るくなった様子が確認できる。里山整備は、良質で緑豊かな生活環境を保全し、土砂災害を予防し、有害鳥獣の住宅地への出没を緩和するなどの効果がある。この里山整備については、NPO法人きんたろう俱楽部などをはじめとする民間ボランティア団体や、心ある企業、市民の力によるところが大きいが、このような継続的な取り組みに心から敬意を表し感謝したいものである。
ところで、日本人は古くから竹に親しみ竹を活用してきた。その用途は、建築では内外装材や壁の下地材、庭園では垣根や庭竹、生活道具では扇子(せんす)や団扇(うちわ) 、竹籠(かご)や暖簾(のれん)、物干し竿(ざお)など、実に多彩であった。茶道や華道の道具としても大切に利用され、美術的価値をも高めてきた。子どもの頃は、自作の竹馬や竹トンボ、竹の釣り竿などでよく遊んだものである。
また、竹にまつわる話と言えば、誰もが知っているかぐや姫が登場する「竹取物語」がある。子どもの頃は、光る竹の中から女の子が生まれるとは、何とも不思議だった。平安時代から連綿と受け継がれてきた名作であるが、最近は絵本やアニメにもなっており、今の子どもたちにも親しまれている。竹にまつわる苗字では、竹内・竹田・大竹・竹中などなど、実に多くの種類がある。竹馬(ちくば)の友・竹を割ったよう・破竹(はちく)の勢いなどは、しばしば使っている諺(ことわざ)や慣用句である。
竹は、古(いにしえ)から私たちの日常生活の中にあり暮らしを支えてきたのであるが、近年はプラスチック材やアルミ材などに取って代わられ次第に縁遠い存在になってきた。一方で、最近は、伝統や文化・芸術の力が見直され、天然素材を使用する機運の高まりも相まって、「竹」に対する評価が再び高まっていることはうれしい限りである。そして、今を生きる私たちが、身近にある「竹」を生活の中に積極的に取り入れて活用することが、竹の価値を高め未来に繋げて行くことに他ならないと思う。

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