秋晴れの一日に想う 2025年11月5日
稲刈りを終えた田んぼでは、朝露を浴びた二番穂が朝日に照らされ宝石のようにキラキラと輝いている。愛犬との散歩には少々肌寒いが、早朝の田舎道は実に清々(すがすが)しい。秋は、何をするにしても実に良い季節であるが、近年は、夏が過ぎるとすぐに冬がやってくる。つまり、秋が短くなったと感じる方も多いだろう。「秋の日は釣瓶(つるべ)落とし」という諺(ことわざ)があるが、日中の時間がどんどん短くなる秋の一日は本当に貴重なのである。
さて、秋は、食欲の秋、芸術の秋、スポーツの秋、読書の秋などとも言われ、人それぞれに楽しみが多い季節でもある。
生来(しょうらい)の食いしん坊である自分にとって最も楽しみなのが、天高く馬肥ゆる秋・食欲の秋である。特に富山の秋は、山の幸、野の幸、海の幸の宝庫である。山の幸は、ナメコ・シイタケ・キノコの王様マツタケなど、野の幸は呉羽梨に始まり、新米・サツマイモ・秋ナス・カボチャ・柿・栗・ブドウ・イチジク・リンゴなど、海の幸は、サンマ・サバ・サケ・カツオ・フクラギ・アオリイカなど、思いつくだけでも実に豪華なラインナップであるが、この時季は、市内各酒蔵の「ひやおろし」を一緒に味わうのも贅沢(ぜいたく)な楽しみである。
また、秋は、美しい紅葉のシーズンでもある。夏には青々と萌(も)えていた山々が、一気に赤や黄色の絨毯(じゅうたん)へと変容する。立山黒部アルペンルートから始まり、黒部峡谷や有峰湖周辺、神通峡や寺家公園、まちなかでは護國(ごこく)神社の東に伸びる平和通りのイチョウ並木なども見事な紅葉スポットである。
伝統行事などに目をやると、人から人へと長い年月をかけて伝承されてきた越中八尾おわら風の盆や城端むぎや祭などは、いずれも独特の情緒があり、何度も訪れたいと思わせる、ふるさと富山の至宝である。加えて、地域の文化祭や運動会、町内の秋祭り・獅子舞などの地域行事も数多く行われ、住民の交流を深め地域の絆を育む大切な年中行事になっている。
また、芸術の秋にふさわしい催し物も多い。本市の岩瀬エリアなどで開催された「GO FOR KOGEI(ゴー フォア コウゲイ) 2025」や市ガラス美術館の前回の企画展「LIVES(ライブズ)」などでは、現代アートが持つ魅力や今後の可能性を感じることができた。加えて、10月5日に開催した「未来へつなぐ とやま伝統芸能の祭典」では、地域が持つ古き良き伝統と誇りを、未来へ継承していくことの大切さを再認識させられた。
さて、皆さんにとっての「秋といえば」は何だろうか?読書やスポーツに親しむのもよし、家族旅行やドライブ、キャンプなどを楽しむのもよし。ぜひ、それぞれの富山の秋を満喫してほしい。
「秋深き隣は何をする人ぞ(松尾芭蕉)」
今宵(こよい)は、秋の夜長にまかせて、地元の「ひやおろし」と、傍らに積まれた未読書をゆっくりと味わいたいと思うのである。

(上)マルタ・クロノフスカ《庭園の犬(トマス・イエペスによる)》2014年
(下)松本勇馬《スカイネッコ》2025年
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