こどもの日に思う 2026年6月5日
緑の絨毯(じゅうたん)へと姿を変える水田と黄金色に輝く麦畑のコントラストが実に美しい。朝の日差しをいっぱいに浴びて、子どもたちが元気いっぱい登校して行く。四季折々に変化する毎日の通学路も、子どもたちの良き故郷の情景になってゆくのだろう。未来を担う子どもたちには、富山の素晴らしい環境の中ですくすくと育ってほしいものだ。
さて、5月は「春のこどもまんなか月間」であった。富山市でも、社会全体で子どもの成長を見守り、子育てを応援するため、さまざまな施策を実施している。ちなみに、期間中の5月5日は、「こどもの日」であり「端午(たんご)の節句(せっく)」でもある。端午の節句は、江戸幕府が定めた季節の節目となる五節句(奇数が重なる日に邪気を払い、無病息災や五穀豊穣(ごこくほうじょう)を願う伝統行事)の一つであり、男の子の健やかな成長と一族の繁栄を願う日本の伝統行事である。その起源は、奈良時代に伝来した中国の厄除(やくよ)け行事にあり、日本の武家文化と融合したものと言われている。五月人形には、武士の象徴である鎧兜(よろいかぶと)を飾り、子どもが困難に打ち勝ち、たくましく成長するようにとの願いが込められている。こいのぼりには、鯉が黄河の急流を昇りきって龍になり昇天したという中国の「登竜門」伝説にあやかり、立身出世の願いが込められている。さらには、武を尊ぶ=尚武(しょうぶ)に由来する「菖蒲(しょうぶ)」を床の間などに飾り菖蒲湯に浸かる、厄除け・魔除けの意味を持つ「ちまき」や子孫繁栄の縁起担ぎである「柏餅」を食べるのも、端午の節句の慣習である。
もう一つの子どもの成長を願う日は、3月3日「上巳(じょうし)の節句=桃の節句」である。言わずと知れた「ひな祭り」であり、女の子の健やかな成長と幸せを願う日である。古代中国の厄払い「上巳節(じょうしせつ)」が起源とされ、子どもの身代わりとして川に流す「流(なが)し雛(びな)」が、平安時代の風習である人形流(ひとがたなが)しと融合し、江戸時代には現在のようなひな人形を飾る形式になったそうである。邪気・悪魔を払い長寿の力を持つと信じられていた桃の花を飾り、子どもに降りかかる災難の身代わりとしてひな人形を飾る。また、ちらし寿司・はまぐりのお吸い物・ひなあられ・菱餅(ひしもち)などには、それぞれに子どもの健康や幸せを願う意味が込められている。日本人にとって、端午の節句・桃の節句は、子どもたちの成長を願う大切な伝統・文化であり、実に意義深い一日なのである。
さて、日本の伝統行事には、その由来や精神性、形式や行為において、脈々と受け継がれてきた祈りや願いが込められている。昨今は、日本人が大切に継承してきた伝統行事が簡素化し消滅しつつあるようにさえ感じる。そして、そのことは日本人としての文化(Cultureカルチャー)や自己意識(Identityアイデンティティー)、根っこ(Rootsルーツ)をも失う事にもなりかねないと危惧(きぐ)するのである。子どもたちの幸せのためにも、今こそ私たち大人が、伝統行事の意義をしっかりと理解し、次世代へと大切に引き継いでゆく必要があるのではないだろうか。
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